はるって、どんなもの? | あさのますみ,荒井良二
『冬服のカーディガンのボタンたちが
まだ見ぬ春をいろいろ考えて想像してみるが、
実際にやってきた春はもっと違う何かだったお話』
エリちゃんのカーディガンについている五つのボタンたちが主人公。冬物衣類であるカーディガンは春になると箪笥にしまわれてしまうため、春というものを知らない。
どんなものか想像すると、あたたかいからカーディガンみたい、いい匂いがするからホットケーキみたい、「来る」ものだから足がある、というイメージをして首をかしげるボタンたち。
ところがじっさいにやってきた春とは。
子どもたちはさいしょ何の話だかわからなかったようだが、なるほどと理解していったもよう。ボタンが首をかしげる、というところで「首ないじゃん!」の一声を入れるのもまあいいかと。春もちかいので、こんな絵本を読んでみた。
むかし春が来るか来ないかという今頃、中野の哲学堂公園へまだ咲かない桜の木をよく見に行った。真夜中に、行ったところでまだ花見の時期でもなく、数本芽が膨らんでいるのを探して満足するだけの散歩だ。
桜はほかにもあるのだから、たぶん哲学堂へ桜を見に行く行為が気に入っていただけなのだと思う。
哲学堂公園は井上円了という哲学者がつくった。「概念橋」とか「唯心庭」とか、哲学用語を配した階段や坂や橋が77か所設置されているのが特徴。そんなに広くもないんだけど。春先になるとこの公園を思い出すので書いてみた。