キャベツくんとブタヤマさん | 長新太
『吊り橋の上で行き交ったキャベツくんとブタヤマさんと
蛇やムカデとミミズがサカナに食べられそうになって、
吊り橋も落ちて逃げ出すお話』
高い吊り橋、流れの速い川。ブタヤマさんは空腹。
かなり危険な状況から話がはじまる。なにかが起こる雰囲気。
案の定、巨大なサカナが登場。
畳み掛けるように蛇も百足もミミズも青虫も出てきて、
凶暴そうなサカナもどんどん増えて、もはやこれまで、という展開だ。
そういう危機的状況で、ブタヤマさんがカミングアウトする。
”じつはキャベツくんをいつも食べたいと思っていた”。
キャベツくんは、”きにしない きにしない”という。
ブタヤマさんは行動が素直だから、告白の内容もおおかたキャベツくんにはバレていたものと思われる。危険な場面に直面したので、死ぬ前に伝えておこうというのも分かるし、結果的にそんなに悪いやつじゃなさそうだと思わせる。
キャベツくんってなにを考えているのかわからないタイプだね。
「気にしない気にしない」=「うん、知ってた」なんだと思うけど、それでいてブタヤマさんを避けるわけでもなく、美味しい食事をご馳走するとまで、キャベツくんはいう。ブタヤマさんはキャベツくんを食べないことまで予測済み、のような不気味さがあるね。
ふたりの進む方向からすると、キャベツくんは橋も渡り終えてレストランに向かうので、はじめからそうしたかったのかもしれない。
ブタヤマさんは結果的に引き返すことになってる。でもお腹が空いていたのはブタヤマさんのほうだし、そもそもどこに行こうとしてたのか分からないのだった。