海底電車 | 松本猛・松森清昭
3行でまとめると
『海底電車に乗って
てつおと車掌さんが
異世界を走る物語』
感想
おじいちゃんの家に引っ越してきたてつお。絶対入ってはいけないという禁断の部屋にそっと入るとそこには模型の電車がたくさんあった、というところから物語は始まる。
水槽のむこうに広がる模型電車の世界なのかな。海底電車は「人の記憶の海を走る電車」で、「心に浮かんだところへ行ける」という。さいしょに入った部屋の中に、ノイシュヴァンシュタイン城やスフィンクスがある。てつおがすでにその風景に心を奪われていたのか、あるいは車掌さんが行こうと思っていた場所なのかわからないけど、海底電車はノイシュヴァンシュタイン城へ向かう。
次に海底電車が向かうのは2000年前のイタリア。てつおが「ここはどこ?」と言っているので、完全に車掌さんの主導で進んでいるのがわかる。その後も車掌さんの説明とともに電車は進んでいく。てつおは楽しそうだ。
これは向こうの世界の物語だ。「デハ1形」の電車のおもちゃをトリガーにして、てつおの心とひいおじいちゃんの世界がつながる。出口はスフィンクスだ。
てつおはお母さんとふたりでおじいちゃんの家へ引っ越してきた。学校にも行けずに家の中にいるという。理由は書かれていないけど、いろいろあったのであろう背景を思わせる描写だ。ひいおじいちゃんがそんなてつおを心配して、てつおの心をちょっと開いてくれたのだ。
昔ひいおじいちゃんは電車の運転士をしていて、デハ1形にも乗っていた。運転士風の廊下の写真はそういうことだろうと長男君も言っていた。ドイツのお城やイタリアが好きで行ってみたかった場所なのだと思う。
てつおは海底電車の旅のあと、おじいちゃんと仲良くなって、学校にも通っているので、いまてつおには「海底電車」は必要ない。また必要になったら、乗れば良いのだ。
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